2019.09.19
Musician

CHEMISTRY

プロデューサー 松尾潔さんによるアルバム「CHEMISTRY」プロダクションノーツ掲載!

CHEMISTRYのケミストリー 松尾

お待たせしました。

川畑要と堂珍嘉邦からなるボーカルデュオCHEMISTRYの8枚目のアルバムが、ようやく完成しました。前作『Trinity』がリリースされたのは2012年1月なので、7年8ヶ月ぶりのアルバムということになります。

テレビ東京『ASAYAN』の「男子ボーカリストオーディション」の審査員だった私が、オーディションのファイナリストである川畑くんと堂珍くんの歌声の相性の良さに強く心惹かれ、ふたりが生み出す「音楽的な化学反応(ケミストリー)」に大きな期待を込めてつけた名前がCHEMISTRYです。

私はデビューアルバム『The Way We Are』(2001年11月)とセカンドアルバム『Second to None』(2003年1月)をプロデュースしました。その時期の楽曲をCHEMISTRYが現在まで歌い続け、ファンのみなさんが長きにわたって熱く支持してくださったことは、ふたりを世に送りだすお手伝いをしたひとりとして心から感謝しています。

ですが、リミックスやカバーを中心としたコンセプトアルバム『Between the Lines』(2003年6月)を最後に、FIFAクラブワールドカップ 2006年大会テーマソング「Top of the World」を唯一の例外として、私はCHEMISTRYの音楽制作の現場からはずっと遠ざかっていました。

5年ぶりにCHEMISTRYを再始動させるにあたり、ふたりはプロジェクトの舵取りを初代プロデューサーの私に依頼してくれました。そのとき、心の襞が痙攣するような嬉しさを感じたものです。

 

再始動後初めてのライブで披露する唯一の新曲として、2017年2月にYouTubeで先行公開したのが「ユメノツヅキ」です。デビュー曲「PIECES OF A DREAM」への16年越しのセルフ・アンサーソングでもあり、歌詞には初期のレパートリーのタイトルを埋めこみました。この時点で、再始動にあたっての音楽的な方向性は、ブギー/モダンディスコを視野に収めた「R&B回帰」で確定しました。

それから2年半。ライブツアーを重ね、4枚のシングルをリリースして、ようやく完成したのがアルバム『CHEMISTRY』です。再始動にあたってアナウンスした予定時期からは大きく遅れてしまいましたが(ずっと心待ちにしてきたファンのみなさん、ごめんなさい!)、そのぶんこの作品集に込められたふたりの熱量の高さといったら、もう。

初期からのファンの方には、今回揃って参加した和田昌哉さん、川口大輔さん、そして豊島吉宏(Maestro-T)さんのトリプルネームは絶対的信頼を意味することでしょう。 実際にアルバム制作はこの3人(スタッフ内では「ケミ御三家」と呼ばれています)の関わる楽曲を軸として進んでいきました。

一方で、STUTSさん、T-GROOVEさん、tofubeatsさん、ケンカイヨシさんといったCHEMISTRYより若い世代の才気あふれるトラックメイカーとのコラボレーションも、今回は実現しています。少年時代、あるいはアマチュア時代にCHEMISTRYに夢中だったことを明らかにしている彼らの存在自体が、この男性ボーカルデュオの音楽的レガシーのハッピーな証左かもしれません。

同じ男性デュオのcanna、さらにそのメンバーであるShusuiさんが磯貝サイモンさん、宮田'レフティ'リョウさんと組んだチームからの提供楽曲も、アルバムに心地よい刺激と彩りを与えています。ケミっていろんな音楽クリエイターから愛されているんだなあと、ありがたさをしみじみ痛感しました。

 

もちろん、初期ヒット曲のクリエイターの楽曲であろうと、初顔合わせとなるクリエイターからの提供楽曲であろうと関係なく、変幻自在に歌いこなす川畑くんと堂珍くんの歌声がまず素晴らしい。どの曲でも、どんな場面でも、CHEMISTRYにはボーカルが第一義としてあります。

溶けあう。響きあう。離れて別々の表情を見せたかと思えば、また重なりあう。

それはまるでふたりの音楽人生のようであり、私たちの生きる営みのようでもあり。

実に16年ぶりとなるCHEMISTRYのアルバムプロデュースは、私にいろんな感情を呼び起こしてくれました。

こう言わせてください。

結局、うたとは声、声とはひとなのだ、と。

 

真にすぐれたポップミュージックには、「この時代にポップミュージックは一体どれほどのことができるのだろうか」という問いかけを発しているようなところがあります。それを音楽の力と呼ぶことに、私はいささかの躊躇もありません。

アルバム『CHEMISTRY』にはその力があるのか、どうか。

答えはあなたの耳でお確かめください。

 

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