ツアーファイナル!
先月リリースしたメジャー移籍第一弾アイテム『猫Pack』をひっさげての全国7都市を巡るツアーが、恵比寿リキッドルームでのワンマンライブでファイナルを迎えた黒猫チェルシー。その自由すぎるライブを観てきた。

この地でライブをするのは、実に2年半ぶりという彼ら。しかも前回はデビュー前。その意識も音も、今以上に荒削りだった頃。「長らくお待たせしました!」とおどけるように語った渡辺大知(ヴォーカル)のMCになんだかキュンとする。
“音楽ギョーカイ”という未曾有の荒波に殴り込みをかけたファーストミニアルバム『黒猫チェルシー』に収録されている『正義感ある殺しは許される』からのスタート。登場の数分前から同曲が流れはじめ、今か今かと心待ちにするオーディエンスの表情は、若干の狂気が見て取れるほどに張り詰めている。そんな会場の一方的な緊張感はどこ吹く風とばかりに、ふらりと登場した、岡本啓佑(ドラム)、宮田岳(ベース)、澤竜次(ギター)、そして渡辺。

ココに至るまでの黒猫チェルシーの歴史を紐解くかのように、『スピーカー』、『ユメミルクソブクロ』と演奏は続く。さっきまで何の気負いもないようなツルリとした表情だった彼らが、一瞬にして豹変。それはまるで細い針で突いてしまったら、弾け飛んでしまいそうな勢いを持って、これ以上しまっておくことが出来ない、とキモチが最大限に飽和に達した状態で音をぶち鳴らしていく。
実は本番の数時間前、会場へと歩を急ぐ渡辺と恵比寿駅周辺ですれ違った。その時は、彼が黒猫のヴォーカルだと知らなかったら全く気にも留めなかったほど、どこにでもいそうな好青年だったのだが、今ステージに上がっている彼は全くの別人。音楽という武器を持った全くの別人格。そんなギャップと、『毛にからまって』『のらりのらねこ』などから、焦燥感にも似たギリギリ感が伝わってくるからこそ、彼らに惹かれてしまうのかもしれない。
前半、歓声がひときわ大きくなったのは『ファンキーガール』。『猫Pack』に収録されている新曲だ。等身大のラブレターでラブソングのそれは胸に刺さらないはずがない。

『猫Pack』のリリースツアーと銘打っているライブではあるが、未CD化で彼らが高校時代にレパートリーにしていたという楽曲を披露する場が、ライブ中盤に設けられていた。彼ら流に言うところの「そろそろ母校を思い出してみようと、“あぁ我が母校、青春の日々”のコーナー」だ。
まだ神戸の高校生だった頃に、「マイスペースで楽曲を披露していたので知っている人もいるかも」(澤)しれないが、「もしかしてお気に召さないかも」(渡辺)という『まるで星』や、澤が別バンドで演っていた『アースジェネレーション』、そして渡辺が、現在の学ラン風の衣装を纏ってライブをするようになったルーツであるという『学蘭のテーマ』。思いがけずこの【青春の日々コーナー】を体験し、この日々があるから今の黒猫があるんだ、としみじみ思いつつ再確認。気づけば鳥肌が立ってしまっていた。

後半は、新曲と“今の黒猫”の連打。“先の日々”があるからこそ“今”があると感じずにはいられない、その流れがニクイ。決して自己完結になっていないのが今で、想いを吐き出して相手に委ね楽曲を成長させていっている。以前の楽曲がモノトーンだとしたら今のには彩がある。『ベリーゲリーギャング』は華やかささえ感じた。

どうしてこうも違い、変わってしまったのだろうか?渡辺が言うところの「2年半の重み」なのだろうか?でもたぶん彼らは何も変わっていないのかもしれない。今感じたままを曲にし、今やりたい曲を演る。ただそれだけ。そしてこれからもふらりとステージに上がって、飄々としながらもゴツゴツとライブを演っていくだろう。そのたびに聴く者の胸にざわつきを与えながら、自由過ぎるまでに。だからこれからも観続け見届けなければならないのだけれど。(hiroco)
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